Illustrating the 2017 Gucci Gift Book

 

このカタログのテーマは何ですか？

イカロスです。私がイカロスに惹かれるのは、彼のストーリーには真理が込められているからだと思います。高く飛びすぎると太陽に焼かれてしまい、低すぎると海でおぼれてしまう。とても当たり前のことに思えますが、私はそこに不変のメッセージを感じます。向こう岸に到達するには、ちょうどいい高さを見つけなければならない。それは宇宙の謎を解く科学の話ではなく、単に人間が置かれる微妙な状況のことです。イカロスは若さと美しさの象徴であり、とてもロマンティックな雰囲気があります。そこがとてもイースト・ロンドン的ですね。私はカタログの中でイラストをどのように展開するかをあらかじめ決めていた訳ではありかせんが、今、完成したカタログを見るとすべてが意味を成しているように思います。例えば、表紙はイカロスが太陽に向かっていくところで、翼が溶けて墜落すると、そこはファッションの聖地グッチだった、というように。

 

グッチ製品の背景やストーリーは、どのように思いついたのですか？

まず先にストーリーを思いつき、製品がそのストーリーの中に置かれて意味を成すか、説得力があるかを考えます。ストーリーに広がりが出ず、行き詰まりを感じた時は、別の方法で作り直すこともあります。

私の作品は、現実的なものに、ちょっとした神話的なものやスペインの情熱を織り込んでいくことで、不思議な魅力や面白みが生まれているのだと思います。自分の作品をアーティステイックで美しくしたいと思うと同時に、誰もが作品の中に入り込んで楽しめるものにしたいのです。

制作はどのようにするのですか？

コンピュター上のPhotoshopやタブレットを使って制作します。すべてデジタルですが、自分専用のブラシを作っています。そうすると絵画的な表現ができ、作品が無機質になりすぎません。またブラシを使うことで、コンピューターの作業をより自分らしく感じることができます。私はずっと絵を描くことを続けています。デジタルアートを始めたのは、とてもクールで新しくて、気取ったところがなく、しかも“手間のかからない”ツールに思えたからです。最初はコミックイラストを描いてみましたが、すぐに自分の心の浮かんだものを表現してみるようになりました。それは例えば、ポップカルチャーのスターの格好悪い場面や、古典絵画を悪ふざけぎりぎりに再解釈したものなど、ティーンエイジャーならではの空想の数々でした。それが私をファッションの世界に導いたのかもしれません。

 

カタログの裏表紙のイラストについて教えてください。ハンドライティングですね？

このカタログのイラストを描いたのは私だということを表現しています。あまりにもたくさん描いたので、鉛筆から煙が出ています。でも私はまだ燃え尽きていません。「火がつく」という意味がある私の名前「イグナシ」のように、鉛筆も私も、グッチの世界で燃え続けています。